天啓観測

Hi zombies!

心療内科に行ってきましたわ、お母さま


 私の心を知り尽くした友人の強い勧めもあったことろですが、自分自身でも私の不眠や不安、自殺願望なんかは専門的なところに診て貰った方がよいだろうと思っていたところでありますので、先日予約のお電話を心療内科さまに差し上げたところでございます。
「直近ですと、一月二十四日が予約できますが」
「はあ、ではその日で」
 と何も考えず了承致しましたけれども、その日が私の誕生日だということにはあとで気が付きまして、とんだ誕生日プレゼントですこと、と思うとおかしくて、はしたなく床を転げ回ってへそで茶を沸かしました。

 そして迎えた生誕祭。目が覚めて鏡を見たら24歳の自分が映っていました。24年必死に生きてきて、辿り着いた先が心療内科とは滑稽な劇ではありませんか。しかし予約は予約。こういう病院は予約を取るのに苦労致しますので、夜にカラスの姿が見えないことのように仕様のないことだと適当にお色直しをして、行ったところでございます。

 先生は親身でしたが、お声が噴水の飛沫よりも小さくて難儀しました。私の思うところについて説明致しますと、先生は書籍を取り出して「貴女みたいに生きる気力に溢れている人は、同時に死への意識も強いのだよ」とイラスト付きで説明してくださいました。私は「では生と死はそれほど変わったことではございませんわね」と言うと「君はそういうことに気が付くから寝れんのだろうね」と笑っておいででした。でも笑い声も小さいので、私はぺこりと小鳥がするみたいにさえずる笑いで応じたのです。

 貴女がどういう病気だ、ということは、心療内科じゃそれほど明言するようなことでもないそうです。先生は「難しい難しい」と言いながら、なにが難しいのかは説明せず、ただどういう薬を出す、と薬の説明を懇切丁寧にしてくださいました。それが抗うつ剤だったので、どうも鬱かそれに近しい状態だと判ぜられたように思います。

 私の不眠や不安が精神的な生き方に起因するものである可能性はもとより、もしかすれば甲状腺に異常があるかもしれませんと言われ「はあ」と相槌を打つと、先生は「甲状腺がどこにあるか分かりますか?」とお聞きになり、知ったかぶって「はあ」と答えたあとではありますけれども「知ってます」と言って「ではどこですか?」と辱められたらたまったものではなく、私は小惑星ひとつ破壊せねばならなくなりますので、淑やかに首を横に振りました。

「ここです」先生は首の付け根あたりを指さしました。私も真似ます。ここが甲状腺、各駅停車、神田行き……そういうことですのね……。先生は続けます。「女性に多い病気なんですが、ここに異常があってどうも生活に快活さが見い出せんということもあるものでしてね、それの検査もしましょう」と言われ、献血、血をどばどばと抜かれました。病院の外だったら犯罪になるくらいの量です。私は「これは犯罪だわ、これは犯罪……」と言いたくなるのを喉の奥で抑え、針のつんとする痛みに堪えました。

 私の血を抜きながら先生は言います。「貴女みたいに苦しんでいる人ほど、周りからはそう見えんでしょう」と言われ、私は大いにそれに思い当たる節があったので、「ええ、楽しそうな人と評価されます」と言いました。先生とはそれきりです。ではまた二週間後にとさよならしました。

 よく分からぬ抗うつ剤、今まで通りの睡眠剤、どちらかといえば不安を落ち着けるのではなく興奮を上げるタイプの不安剤を頂きました。これを見る限り、診断書は次回以降しか受け取れないということなので、鬱でなくともえげつない憂鬱症、不安症で神経質で仕方ないと判断されたのでしょうと思います。

 お母さま、私は断じて煙草なんか吸ってはいませんが、煙草をやめられないと話すと、それは最後の最後にやめればよいと言われたので、これからも喫煙者であり続けることができそうです。

 それではごきげんよう