天啓観測

Hi zombies!

彼岸より

1. 失えば失ったことすら忘れている。常ではないか。何が最善かといえば、失うことである。歓びへの吸着がより強くなるのであれば、失った甲斐があるというもの。



2. 砂浜の先に夜空がある。漆黒の夜空に青紫の星雲、散りばめられた白い雪。上を見上げるとさざめく波が月にぶつかって、それで飛沫を散らしていた。飛んできた水滴が頬に当たって砕け散る。



3. 築40年のボロアパートの扉を開くと駐輪場を挟んだ先に、二階建ての現代建築がある。その窓からシャンデリアのような室内照明が覗いていると、我が家のLEDですらないトイレの照明を思い出す。
 放っておいても幸福の溜まっていく彼らに反して、私は不幸を切り詰めながら生きている。



4. 指を喉に突っ込むが吐き出すのが怖くてやめる。だったら指など突っ込まなければよかったのに。だったら生まれなければよかったのに。



5. 生は生の延長ではなく死の延期である。そのことに気がついて、殊更これがどうやら私以外に当てはまる訳では無いと気付いた時、その認識の差異に辟易とした。ほら、隣の芝は青く見えるというではないか。あと、物欲センサーとも。



6. 私がしたように周りがしてくれるわけではないが、人々はその口で「自分のした行いは自分に返ってくる」と言う。なにが因果か。原因と結果など、混沌を無理やり名付けたにすぎないのに。ほら、想像したまえ。雨という結果は水が蒸発したという原因にあるが、地球が破滅してしまえば二度と雨は降らない。



7. 人工物で事故を起こした動物を人間が救っている。



8. 「自然破壊」という時、まるで人類が自然ではないかのような言い方がされる。草食動物は草を食みすぎ地域の食料を失い自滅する。それを肉食動物が止める。肉食動物が他の動物を食べ過ぎればそれもまた自滅する。はて、人類が自滅するのも自明の理では。人類を滅ぼすのがたまたま他の種ではなく人類だったというだけだ。実は地震にも森林火災にも一定の効果があるということを、人はどうしてか語りたがらない。



9. 人類の特別扱い。例えば蚊が血を吸うのと、人が金を稼ぐことの、何が違う?



10. 道路の真ん中で轢かれ倒れ死んだ猫を、次に来る車に踏まれて無惨な姿にならないよう、手で触れば感染症の心配があるから蹴飛ばして端に除けてやる。人はこれを「非道徳的」と言う。道徳が道徳を殺す例だ。