天啓観測

Hi zombies!

修正共産主義の挫折とコペルニクス的転回


 私は近い将来、AIが人間の労働を肩代わりし、職を失った人々が政府の援助を受け、一種の共産主義社会が訪れた上で、労働がある種の趣味と贅沢と化す修正共産主義社会が成立するのだとかんがえていたけれど、どうも見込みが甘かったらしい。というのも、この間とある事情から役所に行ったわけだが、その際私はある程度どこに行って何をすればいいかというのを、事前にインターネットで調べて向かったものの、実際役所に入ってみると案内がごちゃごちゃしていて分かりにくかったので、目の前にあった「総合受付」みたいなところへ行って「すいません、これこれがしたいんですけど」と伝えたところ「それでしたらあちらの柱の影に案内の人がいますので、その人に声をかけてください」と言う。ああそうですかと思って柱の影の人に声をかけたら「それでしたらそこの階段を下って右手にどうこう」と言うので階段のところを見たら、もうそこには「ここを下って右手にあります」という内容の案内板が貼ってあって、もはやそれを見ればどうしたらいいか分かったのでその柱の影の案内人も必要なかったわけだが、思うのは、いやしかしそれだったら総合受付のところで簡単に「階段を下って右手にあります」と言ってくれれば良かったわけだ。なにを遠回しにたらい回しをするのか。総合受付はじゃあなんだ、案内人を案内するためにあって、案内人は案内板を案内するためにいるのか? そうしてはちゃめちゃに驚愕しただけならまだしも、下に降りれば案内板をただ手に持ってるだけの女の人がおり、そこへ向かえば一人で済みそうな仕事を五人くらいの受付にたらい回しにされたりと、いかにこの世に「無駄な仕事」があるのかと衝撃を受けざるを得なかったわけだ。

 さて、これの意味することが分かりますか。人間は、ロボットに対してコスパが良すぎるんですよ。数百万の初期投資をして便利ロボットを導入して、マニュアル覚えてメンテナンスするより、月数万で人間雇ってマニュアル覚えさせて壊れそうだったら新しい人間を雇い直せばいいんです。その方が安く済む。だがこれをやってる限りは、修正共産主義なんか夢のまた夢。そう、人間のコスパが良すぎるうちは。

 さて私はそうして挫折を味わったわけだが、ここでコペルニクス的転回が訪れる。革命に、もはや暴力は流行らない。そして私の趣味ではない。ではどうしたら労働者は修正共産主義革命が起こせるだろうか。簡単なことだ。転回だ。「ロボットよりコスパが悪ければいい」のである。我々は考えうる限り最悪の労働をして、最も楽な方法でより多くの賃金をブルジョアから奪い取ることを考えるべきなのだ。どうせ、社会はいかに安く労働者を使い潰せるかを考えているわけだから、同様に、労働者もいかに楽にブルジョアから金を取り去るかを考えればよい。そういう革命が行われているうちに、雇い主は気が付くだろう、人間のコスパの悪さに。そして私たちは自由を勝ち取る。