天啓観測

Hi zombies!

塾のJKがやめた。


 受験に成功して、ではないのが最も心残りなところで、塾自体は楽しく通ってくれていたのに多分勉強を最後まで好きになれなくて、それで専門学校に行くことを決めたのだと思う。


 塾アンチの私は別に、塾長とか先方の親が「こうしたい」と娘に対して勝手な将来設計を持っていたとしてもどうでもよかった。でも愛想よく懐いてくる彼女を、もっと広いところへ押し出してやりたかったのもまた事実なのである。


 どうでもいいとはいっても、金はもらっている。私は「大学に行かせるための勉強をする間に、彼女が自分で楽しいことを見つけられればいい」と気持ちに折り合いをつけた。やりたくないことをやらせるのは心苦しい。他の生徒も「やりたくない」とは言うが、勉強をしなければならないと思っている分、やりやすい。


 ちょっとできるようになれば楽しくなるんじゃないかと思ったけれど、根本的なところで彼女は向いていなかった。頭が悪かったわけではなく、始める時期も、親がいきなり娘の将来設計に横槍を入れたことも、とにかく、そのフィールドに辿り着く以前の問題で、最後まで、彼女は勉強する理由も見つけられずにいた。


 私がどれだけなにか動機を作ってやろうとしても、彼女はなびかなかった。住む世界が違ったのだ。たとえ私はあの子のことが好きで、彼女も私のことが好きだったとしても、世界観に垣根があった。英単語一つ覚える暇があったら、彼女は私のことを知りたがった。


 専門学校に行くことにした、来月の末に辞める、と言われたときに、私は私の不甲斐なさを感じた。受験まであと4ヶ月程度だったのに。「じゃあ次の授業からなにしたらいいの」と言うと、「お話ししよ」と言うのだった。最後までついてきてくれるものだと思っていた。


 最後の日に、小論文の練習用に渡した原稿用紙に書いた手紙をもらった。私はその400字に満たない手紙を駅のホームで読んで、読み終わってまた読み返すうちに、電車を5本逃した。学校帰りに毎日タピオカドリンクを飲んでいる女子高生にしては静謐すぎる文字だった。


 彼女は彼女の不甲斐なさを書いていた。色々すいませんでした、と。私が彼女に渡した手紙にも、私の不甲斐なさを書いた。この手紙をもっと早く、彼女に出会う前に読みたかった。お互い別れの手紙に不甲斐なさなど書かないようにしたかった。


 また感情が重すぎるブログを書いてしまった。