天啓観測

Hi zombies!

相談の乗り方はめちゃくちゃ難しいという話

 教える時、言うだけなら簡単ということがあって、たとえば教える教えられるという構図が出来上がってる時、基本的には教える側が上位に立っているのでそれっぽいことを好き勝手言えるのである。すると教える側は何を言ってもいいので、突拍子のないことも言えれば、王道の一般論を言うこともできて、そこに実現性とか相手の立場とかを考慮するとかいうことがほとんど必要なくなる、というか存在しなくなる、と考えられる。


 たとえば絵のうまい人がどうしたら他人と自分を比べないで自信を持つことが出来ますか?という質問を受け取った時の返答として「それ以上に練習すべき」とか「他人と自分を比べちゃいけません」とかなんとか言うけれども、これはやはり実現性とか相手の立場とかを全く考慮された答えではないし、そしてなにより質問に答えた本人がそれを実践している可能性というのもめちゃくちゃ低いのである。


 言っておいてやってないことある? というのはまさに真っ先に出てくる疑問であるが、言っておいてやってないこと、みんなあります。「他人と自分を比べちゃいけません」は一般論だし、そうできたらそれが一番なんだろうけど、質問した人だってそんな一般論は聞いたことがもちろんあるのであり、なにより言った本人だってしててもおかしくなく、それがあくまで一般論で、それが常に正しいと思われているからとりあえず言っているにすぎないということが当然に、その教える教えられるという構図の中に存在している。


 毎日こんだけやればこれができるようになります。とか、ほんとに好きならどんなつらい練習も簡単にできます、とか、そういうこともやっぱり正しいと“信じられている”理屈である、というだけなのではないですか。


 教える側はなんでも言えるから、質問に聞いたことのある一般論で答えるし、質問した側はもうそれ以上なにも言えないので、煮え切らないままそうなのだなあと思って帰るしかない。


 常々相談というのは割とそういうもので、今回のはあくまで例示ですけど、だったらどう答えたらいいのかというと、これが実はめちゃくちゃ簡単というか必要なことで、ただ「そうだよね、比べて自信無くしちゃうよね」と言えばいいのである。すると質問した側は「あ、こんなに絵が上手い人でも私と共感できる部分があるんだ」と勝手に納得して帰っていく。ということがままあるし、大体それで上手くまとまる気がする。


 河合隼雄のカウセリング入門で習いました。